「2,500万円まで贈与税がかからない制度があるらしい」。
この言葉の響きだけで、「相続時精算課税制度(そうぞくじせいさんかぜいせいど)」に飛びつくのは危険です。
かつて、この制度は「一度選んだら二度と戻れない」「少額の贈与でも申告が必要」という少し使いにくい制度でした。
しかし、2024年(令和6年)の税制改正でルールが変わりました。 「年110万円の基礎控除」が新設され、一気に「使える制度」へと生まれ変わりました。
この記事では、新しくなった相続時精算課税の仕組みと、従来の「暦年贈与」とどっちがお得なのか、その判断基準を解説いたします。
1. 【結論】「税金の先送り(後払い)」制度である
まず、この制度の本質を理解しましょう。 「2,500万円まで非課税」と言われますが、税金が免除されるわけではありません。
という制度です。 つまり、税金の先送り(精算)です。
✅ メリット
一気に多額の財産(最大2,500万円)を、贈与税を払わずに子供や孫に移転できる。
⚠️ デメリット
贈与した財産は、将来の相続財産に足し戻される(結局、相続税がかかる)。
2. 2024年からの「新ルール」が凄い
以前は、この制度を選ぶと「年110万円の暦年贈与(非課税枠)」が使えなくなるという致命的なデメリットがありました。
しかし、改正により「精算課税を選んでも、年110万円までは申告不要・持ち戻しなし」という枠が新設されました。
つまり、以下の「二刀流」が可能になったのです。
- 2,500万円ドカンと贈与
(贈与税無税 → 相続時に精算課税) - その後も毎年110万円ずつ贈与
(贈与税無税 → 相続時も無税!)
これにより、「まとまったお金を渡したいけど、毎年のコツコツ贈与も続けたい」というニーズに応えられるようになりました。
3. この制度を使うべき人
新ルールになっても、「誰でも得する」わけではありません。 この制度を使って節税になるのは、以下の条件に当てはまる人です。
① 将来値上がりが確実視される財産(土地・株)を持っている人
これが最大のポイントです。 相続時の税金計算では、「贈与した時の価格」で評価されます。
例えば、今2,000万円の土地を贈与し、将来相続時に5,000万円に値上がりしていたとします。 相続税は「2,000万円」に対してかかります。 差額の3,000万円分が節税出来る事になります。
② 収益物件(アパート)を持っている人
アパートの建物を早めに子などに贈与すれば、その後の家賃収入は「子供のもの」になります。 親の財産(現金)がこれ以上増えるのを防ぎ、子供に資金を移転できます。
【富士・富士宮の実務メモ:富士駅・イオン周辺の「土地」】
この制度が最も威力を発揮するのは、富士市の「富士駅周辺」エリアや、富士宮市の「イオンモール周辺」のような、地価が底堅い人気エリアです。
これらの地域は、再開発や利便性の高さから、今後も価値が上がる(あるいは下がりにくい)と予想されています。
もし、親御さんがこのエリアに更地や駐車場をお持ちなら、今のうちに精算課税制度を使って子供名義に変えておくことで、将来の相続税評価額を「今の価格で固定(ロック)」することができる事になります。
※逆に、将来価値が下がりそうな土地でこれをやると、「高い評価額で固定」されてしまう事になりかえって損をすることになります。
4. 手続きの注意点(届出書の提出)
この制度を使うには、最初の贈与の申告期限(翌年3月15日)までに、税務署に「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。
また、一度選択すると、二度と「暦年贈与(従来のルール)」には戻れませんので、慎重な判断が必要です。
5. まとめ
「2,500万円」という数字に惑わされず、「トータルで相続税が減るのか?」を考える必要があります。
特に「小規模宅地等の特例(土地の8割減)」を使いたい場合など、贈与せずに持っておいた方が有利なケースもあります。 当事務所では、どちらが得か詳細なシミュレーションも行っていますので、是非お気軽にご相談ください!
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この記事を書いた人:能登路 哲也
(のとじ税理士事務所所長 / 公認会計士・税理士)
富士市・富士宮市エリアで相続税申告・生前対策・事業承継を中心とした資産税業務に注力する専門家。一般的な相続手続きや生前対策はもちろん、複雑な税務案件にも精通。資産税のプロフェッショナルとして、地域のご家族一人ひとりの状況に寄り添った親身なサポートを大切にしております。

