「父が亡くなり、実家の土地を相続することになった。近所の不動産屋に聞いたら『3,000万円くらいで売れる』と言われたから、相続税も3,000万円に対してかかるのだろうか?」
いいえ、違います。
実は、日本の土地には「4つの価格(一物四価)」が存在し、どの目的で使うかによって金額がバラバラなのです。 相続税の計算では、売買価格(時価)よりも少し安い「独自の評価額」を使います。
この仕組みを知らないと、遺産分割の話し合いで「姉貴は安い評価額で土地を貰ってズルい!」といった誤解や揉め事に発展しかねません。 そのためこの記事では、土地評価の基本となる4つの価格と、相続における有利・不利について解説いたします。
1. 土地の「4つの値段」とは?
同じ土地でも、以下の4つの名札が付いています。
- 実勢価格(じっせいかかく): 実際に売買される価格(時価)。不動産屋さんが言う値段。
[目安] 100% - 公示価格(こうじかかく): 国土交通省が発表する、土地取引の目安となる価格。
[目安] 実勢価格の90~100% - ✅ 相続税評価額(路線価): 相続税や贈与税の計算に使う価格。国税庁が決める。
[目安] 公示価格の80% - 固定資産税評価額: 毎年払う固定資産税の計算に使う価格。市町村が決める。
[目安] 公示価格の70%
2. なぜ相続税評価額は「80%」なのか?
相続税評価額(路線価)は、時価の約8割になるように設定されています。 これは、「土地は現金と違ってすぐに使えないし、売るのも大変だから、少し安く評価する」という国の配慮です(安全率)。
現金1億円を相続
評価額 1億円
時価1億円の土地を相続
評価額 約8,000万円
つまり、現金で持っているよりも、土地に変えて持っていた方が、評価額が2割下がり、相続税が安くなるという事です。これが相続税対策として「アパートを建てての節税」だったり「タワマン節税」などが言われる主な要因となります。
【富士・富士宮の実務メモ:「逆転現象」】
富士市の北部や富士宮市の山間部は、路線価がついていない「倍率地域」がほとんどです。
これらのエリアでは、過疎化などで実勢価格(売れる値段)が下落しているにもかかわらず、固定資産税評価額が高いままという「逆転現象(税金 > 売れる値段)」が起きる可能性があります。
「計算上の相続税評価額は500万円だが、100万円でも買い手がつかない」
このような場合、いきなり高額な鑑定士に頼む前に、以下の手順で評価を下げられないか検討します。
- 「地目」の見直し: 登記が「宅地」でも、現況が「山林」なら評価額が大幅に下がることもあります。
- 無料査定書の活用: 地元の不動産会社に査定書を作ってもらい、それを参考に減額要因を調査します。
ご自宅の評価額が適正かどうか気になる方は、固定資産税の通知書をお持ちいただければ、簡易診断いたします。
3. 遺産分割でのトラブルの種
この「価格のズレ(時価>相続税評価額の場合)」は、兄弟間の話し合いでも火種になります。
👦 長男の主張
「相続税評価額(路線価)で見ると、土地は2,000万円だ。だから俺は2,000万円分を相続した計算にしてくれ。」
🧒 二男の主張
「ずるいぞ! その土地は売れば3,000万円になるはずだ。時価の3,000万円で計算して、代償金をよこせ!」
どちらも正しい主張ですが、一般的に遺産分割協議(民法)では「時価」をベースに話し合うのが公平とされています。 税金計算は「路線価」、遺産分けは「時価」。 この2つのモノサシを使い分けないと、話がまとまりません。
4. まとめ
「一物四価」は複雑ですが、基本は「相続税は安く評価してくれる(原則8割)」と覚えておけば十分です。
ただし、富士市・富士宮市の郊外地においては、その「8割の原則」が崩れている可能性もあります。 評価額に疑問がある場合は、お気軽にご相談ください。
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この記事を書いた人:能登路 哲也
(のとじ税理士事務所所長 / 公認会計士・税理士)
富士市・富士宮市エリアで相続税申告・生前対策・事業承継を中心とした資産税業務に注力する専門家。一般的な相続手続きや生前対策はもちろん、複雑な税務案件にも精通。資産税のプロフェッショナルとして、地域のご家族一人ひとりの状況に寄り添った親身なサポートを大切にしております。

