「銀行に預けておくと、口座が凍結されたり、税務署に把握されたりするから、現金で引き出して手元に置いておこう」。 いわゆる「タンス預金」です。
日本のタンス預金の総額は数十兆円とも言われていますが、相続税の申告において、このタンス預金ほど「安易に隠されやすく、かつバレやすい」ものはありません。
💡 税務署はあなたの家を「透視」しているわけではありません
税務署は、あなたの家に入らなくても、「お金の流れ」を見ればタンス預金の存在をある程度正確に予測できます。この記事では、タンス預金が判明する仕組みとペナルティについて解説いたします。
1. 【結論】「お金の流れ」から計算でバレる
税務署の調査官は、現場に来る前に勝負を決めています。 彼らが持っている武器は、「過去10年分の入出金履歴」と「KSK(国税総合管理)システム」です。
【入ってきたお金】 - 【使ったはずのお金】 = 【残っているはずのお金】
この計算式で弾き出された金額と、申告された預金残高に大きなズレがあれば、「差額は現金(タンス預金)として持っているはずだ」と当たりをつけて調査に来るのです。
2. どうやって把握されるか(調査官の視点)
具体的には、以下のような動きを見逃しません。
- 直前の多額出金: 亡くなる直前にATMで頻繁に引き出されているのに、本人が入院中で使うはずがなく、手元にも残っていないケース。
- 定期預金の解約: 数年前の解約金が他の銀行に入った形跡もなく、大きな買い物をした形跡もない。「まだ現金で持っていますよね?」となります。
- 使途不明金: 「リフォーム代に使った」などの主張も、領収書や契約書がなければ認められません。
3. タンス預金の典型例
税務調査で見つかる場所は、タンスだけではありません。
- 貸金庫の中: 調査当日に開錠を求められれば拒否できません。
- 仏壇の引き出し・本棚: 封筒に入った現金が隠されているケースも多いです。
- 庭や床下: 徹底的な調査(計算上のズレの追及)があれば、最終的に見つかるリスクは極めて高いです。
【富士・富士宮の実務メモ:富士・富士宮の現金主義】
ここ富士市や富士宮市、特に郊外や山間部の農家・旧家においては、昔からの習慣で「現金主義」のご家庭も多いかと思います。
「手元にないと不安」「冠婚葬祭ですぐ使えるように」という理由で、自宅の金庫に数百万円、時には数千万円単位の現金を保管されていることがあります。
遺品整理で初めて気づいた場合などは、隠そうとせず、すぐに「修正申告」を行ってください。 税務調査で指摘される前に自主的に申告すれば、罰金(加算税)は最低限で済みます。
4. 申告の考え方(手許現金)
タンス預金があること自体は、悪いことではありません。 脱税になるのは、それを「申告しない(隠す)」からです。
相続税の申告書には「手許現金(てもとげんきん)」という記載欄があります。 ここに、亡くなった日時点で自宅にあった現金の総額を記載すれば、堂々とした適正な申告になります。財布の中の小銭から、金庫の束まで正確に計上しましょう。
5. 対策(隠すと重加算税)
一番怖いのは、見つかった時のペナルティです。 意図的に隠したと判断されると、「重加算税」という非常に重い罰金(本来の税額の35%~40%増し)が課されます。
最初から全てオープンにして、適正な納税を済ませることが、結果として一番大切な財産を守ることにつながります。
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この記事を書いた人:能登路 哲也
(のとじ税理士事務所所長 / 公認会計士・税理士)
富士市・富士宮市エリアで相続税申告・生前対策・事業承継を中心とした資産税業務に注力する専門家。一般的な相続手続きや生前対策はもちろん、複雑な税務案件にも精通。資産税のプロフェッショナルとして、地域のご家族一人ひとりの状況に寄り添った親身なサポートを大切にしております。

