「遺産が多いのでユニセフや赤十字に、遺産の一部を寄付したい」
「子供がいないので、母校の大学に奨学金として使ってほしい」
故人の遺志や、相続人の想いから、遺産を寄付される方も増えています。 素晴らしい社会貢献ですが、税金のルールを知らずに行うと、「善意で寄付したのに、そのお金にまで相続税がかかる」という、意図しない結果になることがあります。
逆に、正しい手順で特定の団体に寄付をすれば、その分は「非課税」となり、相続税を安くすることができます。 この記事では、遺産を寄付する際の特例要件と、準確定申告における寄付の扱いについて解説いたします。
1. 【結論】「申告期限まで」に「特定の団体」へ
寄付した財産が相続税の対象から外れる(非課税になる)ためには、以下の3つの条件をすべて満たす必要があります。
- ① 対象となる団体であること:
国、地方公共団体、公益社団・財団法人、認定NPO法人など。
※一般的な「一般社団法人」や「任意団体」への寄付は非課税になりません。 - ② 申告期限までに完了すること:
亡くなってから10ヶ月以内に支払いを済ませ、領収書をもらう必要があります。 - ③ 相続した財産そのものを寄付すること:
「遺産でもらった100万円」を寄付するのはOKですが、「自分の貯金」からの寄付ではこの特例は使えません。
2. 寄附金控除の基本(所得税 vs 相続税)
「寄付で税金が安くなる」といっても、安くなる税金の種類が異なります。ここを混同しないようにしましょう。
| 寄付のタイミング | 安くなる税金 |
|---|---|
| 生前の寄付 | 本人の「所得税・住民税」(寄附金控除) |
| 死後の寄付(遺産) | 相続人の「相続税」(非課税特例) |
3. 準確定申告での寄附金控除
亡くなった方が生前(1月1日〜死亡日)に寄付をしていた場合は、「準確定申告」で寄附金控除を受けられます。
例えば、亡くなる直前に赤十字に寄付していた場合、これを計上することで還付金が増える可能性があります。領収書が遺品の中に紛れていないか、よくご確認ください。
【富士・富士宮の実務メモ:自治体への土地寄付は難しい】
富士市や富士宮市の地主様の場合「使い道のない山林や空き地を市役所に寄付したい」と考えられる場合もあるかと思いますが、結論から言うと、不動産の寄付は断られるケースが99%となります。
市役所としても、管理コストがかかる土地を無償で引き受けるメリットが少ないからです。「道路予定地」などの明確なニーズがない限り、不動産の現物寄付はほぼ不可能となります。
手放したい土地がある場合は、「相続土地国庫帰属制度」や近隣への無償譲渡を検討することになります。
4. 相続税との違い(遺言か、相続人の意思か)
寄付には大きく分けて2つのパターンがあります。
- A. 遺言による寄付(遺贈寄付): 故人が遺言書で指定。最初から相続財産から控除されます。
- B. 相続人による寄付: 遺言はないが、財産をもらった相続人が自分の意思で寄付。要件を満たせば非課税ですが、手続きの順番(遺産分割との兼ね合い)に注意が必要です。
5. 注意点:必要書類
この特例を使うためには、申告書に以下の書類を添付する必要があります。
- 寄付金の領収書
- 寄付した法人の証明書(公益法人証明など)
小さなNPO法人の場合、証明書発行に時間がかかることもあります。申告期限ギリギリにならないよう、早めに連絡を取っておきましょう。
まとめ
寄付は、税金対策である以前に「想いの承継」です。しかし、制度の不備で課税されてしまっては、故人の想いも浮かばれません。
「どこに寄付すれば非課税になるのか?」と迷われている方は、事前にご相談いただければ、適格な団体かどうかの調査を代行いたします。
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この記事を書いた人:能登路 哲也
(のとじ税理士事務所所長 / 公認会計士・税理士)
富士市・富士宮市エリアで相続税申告・生前対策・事業承継を中心とした資産税業務に注力する専門家。一般的な相続手続きや生前対策はもちろん、複雑な税務案件にも精通。資産税のプロフェッショナルとして、地域のご家族一人ひとりの状況に寄り添った親身なサポートを大切にしております。

