相続税の申告書を提出して、税金も納付した。「これで肩の荷が下りた」と安心するのはまだ早いです。
実は、申告した後になってから「計算ミス」や「財産の記載漏れ」が発覚するケースもあります。
この時、「税金を払いすぎていた(取り戻したい)」のか、「税金を安く計算しすぎていた(追加で払わなければならない)」のかによって、行うべき手続きの名前や期限、ペナルティの有無も違います。
この記事では、払いすぎた税金を取り戻すための「更正の請求(こうせいのせいきゅう)」と、追加で納税するための「修正申告(しゅうせいしんこく)」の違いについて、実務的な注意点と成功事例を交えて解説いたします。
1. 更正の請求(払いすぎた税金を取り戻す)
これは、納税者にとって「メリットしかない」手続きとなります。
「土地の評価額を高く計算しすぎていた」「使えるはずの特例を使い忘れていた」などの理由で、本来納めるべき額より多く払ってしまった場合に、税務署長に対して「計算し直してください(還付してください)」と請求します。
- 期限: 原則として、申告期限から5年以内。
- ペナルティ: なし。むしろ、払いすぎた期間に応じて利息相当分の「還付加算金」がプラスされて戻ってきます。
ここが重要なポイントです。
税務署は、計算間違いで税金が少なかった時は厳しく言ってきますが、多かった時は「多かったですよ」とは言ってくれません。黙って受け取ったままです。
そのため、自分(または依頼した税理士)が気づいてアクションを起こさない限り、1円も戻ってきません。
2. 修正申告(足りない税金を追加で払う)
こちらは、納税者にとって「耳の痛い」手続きです。
「タンス預金の計上漏れが見つかった」「税務調査で指摘を受けた」などの理由で、本来納めるべき額より少なかった場合に行います。 正しい計算で申告書を作り直し、差額の税金を納めます。
期限: 税務署から更正(強制処分)を受けるまで(なるべく早く)。
ペナルティ(余分なお金)がかかる
- 延滞税: 納期限の翌日から納付日までの日数に応じた「利息」。
- 過少申告加算税: 本来の税金の10%~15%の罰金。
- 重加算税: 悪質な隠ぺいとみなされた場合、35%~40%もの重い罰金。
※ただし、税務調査の通知が来る「前」に自主的に気づいて修正申告をした場合は、過少申告加算税はかかりません。「間違えた!」と思ったら、調査が来る前にすぐ動くことが重要となります。
【富士・富士宮の実務メモ:土地評価はもっと下がる?】
「更正の請求」が最も成功しやすい(=お金が戻ってくる)パターンは、圧倒的に「土地評価の見直し」です。
相続税の申告、特に「土地の評価」は、担当する税理士によって判断が分かれる非常に専門的な分野です。 机上の図面だけではなく、「現地調査」を行って初めて見つかる減額ポイントが多々あります。
【このエリアの減額ポイント】
- 地積規模の大きな宅地(旧広大地): 1000㎡以上の広い敷地。大幅な評価減の可能性。
- 不整形地・無道路地: 形がいびつな土地や道路に接していない土地。
- がけ地・傾斜地: 富士宮市の北部や富士市の山間部などにある平らではない土地。
土地評価が正しく下がれば、数百万円単位で税金が戻ってくる可能性があります。「最初の税理士さんに悪いから…」と遠慮する必要はありません(ご自身が伝えない限り知られることもありません)。
申告から5年以内であれば間に合いますので、セカンドオピニオンなどをご希望の方は、お気軽にご連絡ください。
3. 「未分割申告」からの更正の請求
前回の記事で解説した通り、遺産分割がまとまらずに「未分割申告(法定相続分での仮申告)」をした場合も、後日話し合いがまとまった段階で「更正の請求」を行います。
これによって、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった特例を適用し、払いすぎた税金を取り戻すことができます。
この場合の期限は、「分割が決まった日の翌日から4ヶ月以内」です。5年ではありません。
うっかり期限を過ぎると、特例が使えず、仮払いの高い税金のまま確定してしまいます。
分割協議書にハンコを押したら、その足ですぐに税理士に連絡してください。
4. まとめ
「更正の請求」は、納税者の正当な権利です。 一度終わった申告書をひっくり返すのは勇気がいりますが、見直すだけで数百万円、時には数千万円単位で払いすぎていた税金が戻ってくる可能性があるなら、やらない手はありません。
当事務所では、「他の税理士の先生が作った申告書の見直し」も守秘義務を徹底遵守して行っておりますので、もしかしたら相続税を払い過ぎたかもと思われたらすぐにご連絡下さい。
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この記事を書いた人:能登路 哲也
(のとじ税理士事務所所長 / 公認会計士・税理士)
富士市・富士宮市エリアで相続税申告・生前対策・事業承継を中心とした資産税業務に注力する専門家。一般的な相続手続きや生前対策はもちろん、複雑な税務案件にも精通。資産税のプロフェッショナルとして、地域のご家族一人ひとりの状況に寄り添った親身なサポートを大切にしております。

