「遺産分割の話し合いを始めたいけれど、そもそも親の財産が全部でどれくらいあるのか分からない…」
相続手続きの第一歩でつまずくのが、この「財産の全体像の把握」です。
通帳が何冊あるのか、不動産はどこにあるのか、借金はあるのか。 これらを曖昧なままにして話し合いを始めると、後から大騒ぎになったり、隠し財産を疑われたりと、トラブルに直結します。
そこで必ず作成しなければならないのが「財産目録(ざいさんもくろく)」です。 この記事では、財産目録の精度と、抜け漏れを防ぐ手順について解説いたします。
1. 【結論】相続の「地図」を作る作業
財産目録とは、亡くなった時点での「プラスの財産」と「マイナスの財産」をすべてリストアップし、それぞれの「評価額」を記載した一覧表のことです。
この目録があることで、初めて相続人全員が公平な遺産分割のテーブルに着くことができます。法律上、決まった書式はありませんが、Excelなどで一覧表にするのが一般的です。
2. 財産目録の2つの役割
① 遺産分割協議のため(円満相続)
「総額これだけの遺産があり、法定相続分だと一人いくらになるか」を可視化することで、感情的な対立を防ぎます。
② 相続税申告のため(納税)
目録の段階で「評価額(時価と路線価)」を調査しておかないと、後で「税金が払えない!」という事態になりかねません。
3. 記載すべき項目(プラスとマイナス)
➕ プラスの財産
- 不動産(土地・建物)
- 金融資産(現預金・株・投資信託)
- その他(生命保険金・自動車・貴金属・貸付金など)
➖ マイナスの財産
- 借金(銀行借入・カードローン)
- 未払金(医療費・施設利用料・税金・クレカ残債)
- 葬式費用(葬儀代・お布施など)
4. 作成手順と「必要な細かさ」
単に「〇〇銀行」と書くだけでは不十分です。名義変更の手続きにそのまま使えるレベルの精度が必要です。
❌ ダメな例
・〇〇銀行の預金:1,000万円くらい
・実家の土地:2,000万円くらい
⭕ 良い例(プロの細かさ)
・〇〇銀行 富士支店 普通預金 1234567:10,000,543円
・富士市〇〇町一丁目 宅地 200.50㎡:固定資産税 2,100万 / 相続税 2,400万 / 時価 3,000万
特に「相続税評価額」と「時価(売却想定額)」を併記するのがポイントです。税金には評価額を、分け合いには時価を使うためです。
【富士・富士宮の実務メモ:意外と漏れる「隠れ財産」】
富士市・富士宮市の地主様の場合、以下のような項目が抜け落ちがちです。
- 私道(しどう)の持分: 自宅前の道路が非課税だと通知書に載らないため、目録から漏れがちです。漏れると将来の売却や建て替えで大トラブルになります。
- 山林・原野(大淵・芝川方面など): 「価値がないから」と無視すると、名義変更ができず、次世代でさらに揉める原因になります。
- 農協(JA)への出資金: 口座を持っていると数千円〜数万円の出資金があることが多く、これも立派な相続財産です。
当事務所では、「名寄帳(なよせちょう)」を職権で取得し、ご家族も忘れていたような山林や私道まで徹底的に洗い出します。
5. テンプレートと調査のコツ
調査のコツは「郵便物」です。銀行や市役所から届く封筒をすべて保管し、そこから一つずつ確認してリストアップしていくのが最も確実です。
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この記事を書いた人:能登路 哲也
(のとじ税理士事務所所長 / 公認会計士・税理士)
富士市・富士宮市エリアで相続税申告・生前対策・事業承継を中心とした資産税業務に注力する専門家。一般的な相続手続きや生前対策はもちろん、複雑な税務案件にも精通。資産税のプロフェッショナルとして、地域のご家族一人ひとりの状況に寄り添った親身なサポートを大切にしております。

