「父が亡くなり、遺産を整理していたら、バブルの頃に買ったリゾートマンションの権利証が出てきた…」
「子供の頃に数回行ったきり、もう何十年も使っていない。固定資産税と管理費の請求書だけが毎年届く…」
こういった場合、現金や自宅は相続したいけれど、リゾートマンションだけはいらない。 しかし、相続は「プラスの財産もマイナスの財産もセット」が原則です。「マンションだけ放棄する」という事は出来ません。
安易に相続してしまうと、売ることも貸すこともできず、死ぬまで高額な管理費を払い続けるリスクがあります。 この記事では、リゾートマンションが抱えるリスクの正体と、相続放棄や処分(有償引き取り)という解決策について解説いたします。
1. 【結論】「資産」ではなく「負債」として扱う
バブル期に数千万円で購入した物件であっても、現在の価値はゼロ、あるいはマイナスである可能性もあります。
例えば、不動産屋のサイトで「販売価格10万円」で売りに出されている物件は、「10万円の価値がある」のではなく「タダでもいいから手放したいけれど、0円ではシステム上登録できないから10万円にしている」といった事が現実です。 相続財産として計上する際は、プラスの財産としてではなく、「将来にわたって現金を減らす負債」として慎重に判断する必要があります。
2. なぜ「タダでも売れない」のか?(ランニングコストの罠)
リゾートマンションが売れない最大の理由は、所有しているだけでかかるコストが高いからです。
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高額な管理費・修繕積立金:
温泉やプールなどの豪華設備を維持するために、月額3万~5万円(年間40万~60万円)かかることもザラです。 -
滞納金の引き継ぎ:
親が管理費を滞納していた場合、新しい所有者であるあなたが全額を支払う義務を引き継ぎます。 -
解体できない:
戸建てなら解体して更地にできますが、マンションは一室だけ壊すことは不可能です。
3. 対処法①:相続放棄をする(3ヶ月以内)
一番確実で完全な解決策は、「相続放棄」をして最初から相続人にならなかったことにすることです。 これなら、マンションの所有権も、滞納管理費の支払い義務も負わなくて済みます。
相続放棄は「0か100か」です。「マンションはいらないけど、実家の預金は欲しい」という使い分けはできません。預金や自宅もすべて手放す覚悟が必要です。
4. 対処法②:お金を払って引き取ってもらう(有償譲渡)
「他の遺産があるから相続放棄はできない。でもマンションは手放したい」 この場合は、相続してから処分するしかありません。 しかし、普通に不動産屋に頼んでも売れないことが多いため、「処分料(引取料)を払っての手放し」を検討します。
専門の業者に数十万~100万円程度の解決金を支払って所有権を移転します。「お金を払うのは納得いかない」と感じるかもしれませんが、毎年50万円の管理費をあと20年払い続ける(=1,000万円)ことと比べれば、賢明な判断となるケースも多いです。
【静岡県東部の実務メモ:熱海・伊東・函南の「評価額」の罠】
熱海市、伊東市、函南町などのリゾートマンションの相続案件で恐ろしいのは、「相続税評価額」と「時価(売れる値段)」の逆転現象です。
【事例】
相続税評価額(固定資産税ベース): 300万円
時価(市場価格): 0円(不動産屋に断られる)
この場合、漫然と申告すると「売れないのに300万円分の税金を取られる」という理不尽な状態になります。相続税申告については、不動産会社から簡易見積もりを取るなどして、実態に合わせて評価額を引き下げ引き下げる事が出来ないかを検討する事が重要になります。
5. 「相続土地国庫帰属制度」は使える?
2023年から始まった、不要な土地を国に返す制度。期待されていますが、残念ながらこの制度は「更地の土地」が対象です。 建物(マンションの一室)は対象外ですので、現時点ではこの制度を使って国に返すことはできません。
6. まとめ
リゾートマンションの相続は、親御さんが元気なうちに「生前処分」を話し合うのがベストです。 もし相続が発生してしまったら、3ヶ月という期限内に「相続放棄」か「相続して有償処分」かの損得計算を完了させる必要があります。
(税理士からのワンポイントアドバイス)
親御さんが「価値がある」と思い込んでいる場合は、近隣の不動産屋に一本電話を入れて「いくらで売れますか?」と聞いてみてください。もし「買取不可」というような回答であれば、それが対策を始める第一歩になる事があります。
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この記事を書いた人:能登路 哲也
(のとじ税理士事務所所長 / 公認会計士・税理士)
富士市・富士宮市エリアで相続税申告・生前対策・事業承継を中心とした資産税業務に注力する専門家。一般的な相続手続きや生前対策はもちろん、複雑な税務案件にも精通。資産税のプロフェッショナルとして、地域のご家族一人ひとりの状況に寄り添った親身なサポートを大切にしております。

