「相続財産」と「相続税の課税対象」って同じ?課税される・されないの境界線

「遺産相続」と聞くと、預金通帳、不動産の権利証、株券などを思い浮かべる方が多いかと思います。
しかし、いざ相続税の申告書を作る段階になると、「えっ、これも税金がかかるの?」「逆に、これは引いていいの?」というものがあります。

実は、民法上の「遺産(分ける対象)」と、税法上の「課税対象(税金がかかるもの)」はイコールではありません。
遺産分割では出てこない「生命保険金」に税金がかかったり、逆に高価な「お墓」には税金がかからなかったりと、ルールが複雑です。

この記事では、何が課税されて、何が非課税なのか。相続税申告の対象となる財産の境界線を、実務的な視点で整理します。

目次

1. 【結論】本来の財産 + みなし財産 - 非課税 - 債務

相続税がかかる金額(課税価格)は、以下の4つの要素を足し引きして計算します。

  • 本来の相続財産(預金、土地など)
  • みなし相続財産(死亡保険金など)
  • 非課税財産(お墓、保険の非課税枠など)
  • 債務・葬式費用(借金など)
【計算式】
(1+2)-(3+4) = 相続税の課税価格

それぞれ具体的に見ていきましょう。

2. プラスの財産(本来の財産+みなし財産)

まず、亡くなった時点で保有していた経済的価値のあるものはすべて対象です。

  • 不動産:宅地、農地、山林、建物(未登記含む)。借地権などの権利も対象です。
  • 金融資産:現金、預貯金、株式、国債、投資信託。
  • 動産:車、家財道具、貴金属、骨董品、書画。
  • その他:著作権、ゴルフ会員権、貸付金(友人に貸したお金など)。

さらに、死亡に伴って発生する以下の「みなし相続財産」も加算します。

  • 生命保険金
  • 死亡退職金

これら「みなし相続財産」は遺産分割の対象ではありませんが、税金計算上はプラスの財産としてカウントします。

【富士・富士宮の実務メモ:見落としがちなローカル財産】

ここ富士・富士宮エリア特有の、計上漏れしやすい財産があります。

農地や山林・原野:
「二束三文だから価値がない」と思い込んでいる山林や原野、あるいは茶畑などは要注意です。特に富士宮市の北部や富士市の山間部では、固定資産税の通知書には載っていなくても(免税点以下)、名寄帳(なよせちょう)を取ると出てくることがあります。価値が低くても財産計上は必須です。

自動車・農機具:
この地域は完全な車社会であり、一家に一台ではなく「一人一台」所有されているご家庭がほとんどです。亡くなったお父様名義の軽自動車や趣味のバイク、また農業を営まれていた場合はトラクターなどの農機具も「動産」として評価の対象になります。

名義預金(めいぎよきん):
これが一番怖いです。奥様やお子様・お孫様名義でコツコツと分散して貯蓄されていても、実質的な管理者が亡くなった方であれば、それは「名義預金」として課税対象になります。

3. マイナスの財産(債務控除)

プラスの財産から差し引くことができるものです。

  • 借金:住宅ローン(団信がない場合)、アパートローン、事業用借入金。
  • 未払金:死亡後に支払った医療費、住民税、固定資産税、水道光熱費など。
  • 葬式費用:お通夜・告別式の費用、火葬料、読経料(お布施)、運転手への心付けなど。

【注意!引けないもの】

香典返し、法要(四十九日など)の費用、亡くなった後の墓地・仏壇の購入費用、相続登記の司法書士費用などは、控除の対象外です。

4. 非課税財産(税金がかからないもの)

以下のものは、国民感情や社会政策的な配慮から非課税とされています。

祭祀財産(さいしざいさん):
墓地、墓石、仏壇、仏具、神棚など。 これらは「先祖を祀るためのもの」として非課税です。
したがって、生前に自分のお金でお墓や仏壇を買っておくことは、手元の現金を減らして非課税財産に変えることになるため、有効な節税対策になります(※亡くなった後に買った場合は、差し引くことはできません)。

生命保険金・死亡退職金の非課税枠:
それぞれ「500万円 × 法定相続人の数」までは非課税です。

5. まとめ

相続税の対象になる財産は、ご家族が把握しているものだけとは限りません。
タンスの奥から出てきた借用書や、ネット銀行の口座、あるいは税務署だけが知っている過去の金銭移動(名義預金)など、後から出てくると厄介なものが沢山あります。

正確な申告のためには、「財産の棚卸し」を徹底的に行うことが重要です。何が対象になるか不安な方は、お気軽にご相談ください!


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この記事を書いた人:能登路 哲也
(のとじ税理士事務所所長 / 公認会計士・税理士)

富士市・富士宮市エリアで相続税申告・生前対策・事業承継を中心とした資産税業務に注力する専門家。一般的な相続手続きや生前対策はもちろん、複雑な税務案件にも精通。資産税のプロフェッショナルとして、地域のご家族一人ひとりの状況に寄り添った親身なサポートを大切にしております。

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