「父が亡くなり、相続手続きの準備をしていた矢先に、なんと母も急死してしまった…」
高齢化が進む現在、このような事態も決して珍しくありません。
最初の相続(父)の手続きが終わらないうちに、次の相続(母)が始まってしまう状態を、専門用語で「数次相続(すうじそうぞく)」といいます。 ただでさえ大変な相続が「2回分」重なるわけですから、遺族の混乱は計り知れません。
「遺産分割協議書はどう書けばいいの?」「相続税の申告は2回やるの?」 この記事では、数次相続が起きた時の手続きの進め方と、1枚の協議書で解決するテクニックについて解説いたします。
1. 【結論】パズルを解くように整理する
数次相続が発生すると、相続人が「一人二役」を演じることになり、権利関係が複雑に絡み合います。 しかし、慌てる必要はありません。
法律上、2つの相続をまとめて処理できる特例や、税金が安くなる控除(相次相続控除)が用意されています。 一つずつ紐解いていけば、必ず解決できます。
2. 数次相続の定義(一次と二次が重なる)
数次相続とは、「遺産分割協議や登記が終わる前に、相続人の一人が死亡し、次の相続が開始すること」です。
【例:父死亡(一次)、その3ヶ月後に母死亡(二次)、子は長男1人】
長男は、以下の2つの立場を同時に持ちます。
- 父の相続人としての自分
- 母の相続人としての自分(母が父から相続するはずだった権利を引き継ぐ)
遺産分割協議を行う際、長男は「自分」と「亡き母の代わり」の一人二役で参加することになります。
3. 遺産分割の注意(協議書は1通でOK)
通常なら「父の協議書」と「母の協議書」の2通が必要ですが、数次相続の場合、これらをまとめた「1通の遺産分割協議書」で作ることができます。
【書き方のポイント】
・「被相続人 父〇〇の遺産は、亡 母〇〇が全て相続したこととする」
・「被相続人 母〇〇の遺産(父から承継した遺産含む)は、長男が全て相続する」
このように、一度、亡くなった母に相続させてから、それを長男が引き継ぐという流れを1枚の紙に記載します。 これにより、不動産の名義変更(登記)も、一定の条件を満たせば「父→長男」へ直接移転できる特例が使えるケースがあります(※詳細は司法書士への確認が必須です)。
【富士・富士宮の実務メモ:遠方家族と「数次相続」】
ここ富士市や富士宮市では、進学や就職を機に、お子様が東京や神奈川などの首都圏で生活されているケースも非常に多いです。
父が亡くなった直後に母も亡くなるような「数次相続(すうじそうぞく)」が発生すると、手続きの難易度は一気に上がります。 例えば、実家の長男と都市部にいる兄弟の間で、協議書を郵送で回していくだけでも、1~2ヶ月が経過してしまう事もあります。
これでは、相続税の申告期限(10ヶ月)にあっという間に間に合わなくなります。数次相続が発生したり、相続人が遠方に散らばっている場合は、悠長に構えず、すぐに専門家を入れて事務連絡をスタートさせてください。
4. 税務申告(期限の延長特例)
相続税の申告は、原則として2回分必要ですが、申告期限には特例があります。
・一次相続(父)の申告期限:
本来は「父の死亡の日の翌日から10ヶ月以内」ですが、数次相続の場合、「二次相続(母)の死亡を知った日の翌日から10ヶ月」まで延長されます。
・二次相続(母)の申告期限:
「母の死亡の日の翌日から10ヶ月以内」。
つまり、父と母の申告期限が同じ日に揃うことになります。 この日に向けて、2件分の申告書を同時に作成し、提出します。
また、短期間に2回相続税を払うことになるため、1回目の税金の一部を2回目の税金から引くことができる「相次相続控除(そうじそうぞくこうじょ)」の適用漏れがないように注意が必要です。
5. まとめ
数次相続は、一度にまとめて処理できる分、司法書士や税理士の手数料を割安に抑えられるメリットもあります。 「親が相次いで亡くなった」という場合は、まずは戸籍謄本をお持ちになってご相談ください。
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この記事を書いた人:能登路 哲也
(のとじ税理士事務所所長 / 公認会計士・税理士)
富士市・富士宮市エリアで相続税申告・生前対策・事業承継を中心とした資産税業務に注力する専門家。一般的な相続手続きや生前対策はもちろん、複雑な税務案件にも精通。資産税のプロフェッショナルとして、地域のご家族一人ひとりの状況に寄り添った親身なサポートを大切にしております。

