寄与分とは?介護した家族が多く相続できる制度

「仕事を辞めて、10年間寝たきりの親の介護をしたのは私です。何もせず東京で暮らしていた兄と、遺産が同じ額だなんて納得できません!」

遺産分割の現場では、このようなケースも珍しくありません。

民法では、被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をした相続人に対して、本来の取り分に上乗せして財産を与える「寄与分(きよぶん)」という制度を設けています。 「介護」はその代表的な例です。

しかし、これを適用するには現実的にかなりハードルが高いです。 「介護をしたら当然もらえる」と思ったら大間違いです。家庭裁判所で寄与分が認められるケースは極わずかというのが実情です。 この記事では、寄与分が認められるための厳しい要件と、「寄与料」という新しい制度について解説いたします。

目次

1. 【結論】「特別な貢献」の証明が必要

単に「親の面倒を見た」だけでは認められません。 法律が求めているのは、「特別の寄与」です。

  • 通常期待される範囲内(扶養義務):
    寄与分にならない。 (例:週末に掃除に行った、病院の付き添いをした、小遣いをあげた)
  • 特別の寄与:
    寄与分になり得る。 (例:仕事を辞めてつきっきりで介護し、本来払うべきヘルパー代月20万円を浮かせた。親の事業を無給で手伝い、人件費を浮かせた。)

つまり、「家族としての情愛」ではなく、「本来払うべきコストを浮かせた(財産の減少を防いだ)」という経済的な効果が証明できなければなりません。

2. 寄与分の要件(3つのハードル)

以下の3つをすべて満たす必要があります。

  • ➀ 相続人自身が貢献したこと: 原則として相続人本人の行為が必要です。
  • ➁ 特別の寄与であること: 民法上の協力扶助義務(夫婦や親子の助け合い)の範囲を超える負担が必要です。
  • ➂ 財産の維持・増加に貢献したこと: 「精神的な支え」ではなく、金銭換算できる貢献が求められます。

3. 主張の方法(証拠が重要)

寄与分を認めてもらうためには、感情論ではなく「証拠」を提示する必要があります。

【有効な証拠の例】

  • 介護日誌: 毎日の排泄・食事介助の記録。これが一番の証拠になります。
  • 要介護認定の記録: 要介護3以上など、つきっきりの介護が必要だった証明。
  • 診断書・カルテ: 認知症の進行具合などの客観的データ。
  • 預金通帳: 親の事業資金や生活費を自分が立て替えた記録。

【富士・富士宮の実務メモ:介護事情】

ここ富士市や富士宮市などでは、自宅で最期まで親を看取るご家庭もあり、献身的な介護をされる方が多くいらっしゃいます。

しかし、残念ながら遺産分割協議で「寄与分」がすんなり認められるケースは稀です。 もし、これから介護を始める方や現在進行中の方がいれば、「遺言書」を書いてもらうことを強くお勧めします。

親に「介護の感謝として、〇〇を多めに相続させる」と一筆書いてもらうだけで、高いハードルを飛び越えて確実に報われることができるからです。「死後の裁判」に勝つよりも、「生前の遺言」の方が遥かに確実です。

4. 合意できない場合(家庭裁判所へ)

話し合いが決裂すれば、家庭裁判所に「調停」を申し立てることになります。 しかし、裁判所の判断は極めてシビアです。

「10年間介護しても、認められたのは数百万円(ヘルパー日当換算)」ということも珍しくありません。 精神的苦痛に対する慰謝料的な意味合いはほとんど考慮されないため、骨折り損になる可能性も高いことを覚悟しなければなりません。

5. 特別寄与料(長男の嫁も請求可能に)

2019年の法改正で、相続人ではない親族(息子の妻など)も、介護などの貢献に対して金銭を請求できる「特別寄与料(トクベツキヨリョウ)」の制度ができました。

これまで「義理の親の介護をしても一円ももらえない」と泣き寝入りしていたお嫁さんも、相続人に対して「介護料を払ってください」と正当に請求できるようになったのです。

まとめ

寄与分は「美しい制度」ですが、実際に使うのは非常に大変です。 争いになる前に、介護日誌をつけ、可能であれば親御さんと相談して遺言書を残してもらうこと。これが最大の自衛策となります。


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この記事を書いた人:能登路 哲也
(のとじ税理士事務所所長 / 公認会計士・税理士)

富士市・富士宮市エリアで相続税申告・生前対策・事業承継を中心とした資産税業務に注力する専門家。一般的な相続手続きや生前対策はもちろん、複雑な税務案件にも精通。資産税のプロフェッショナルとして、地域のご家族一人ひとりの状況に寄り添った親身なサポートを大切にしております。

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