父親所有のマンションを子名義のローンでリフォーム。持分1%贈与と代物弁済の税務リスク

【ご相談事例】父所有のマンションを子名義でリフォーム。持分1%贈与と代物弁済の税務リスク

お客様からのご相談内容

父が100%所有するマンション(横浜市、RC造、84.59㎡、1998年築)に同居しており、子の私がリフォームローン(390.3万円)を組んで改修を行う予定です。このリフォーム代金の弁済として、後日「代物弁済」の形で父から私へ持分を移転する計画を立てています。

【質問事項】
1. 着工前に父から持分1%を贈与で取得し、リフォーム代全額を私が負担します。最終的に全持分を取得する計画がある場合、着工時の持分が1%でも、390.3万円全額を住宅ローン控除の対象にできますか?
2. 購入価格3,750万円、築28年であることを考慮すると、約390万円分の持分移転において父側に譲渡益(譲渡所得税)が発生するリスクは低いと考えてよいでしょうか?
3. 代物弁済の持分計算において、時価ではなく「固定資産税評価額(約684万円)」を基準とすることは、低廉譲渡(贈与)とみなされるリスクがありますか?
4. 「1%贈与(事前)+代物弁済(事後)」の一連の流れを契約書で明確にすれば、多額のリフォーム費用が父への贈与と認定されるのを回避できるでしょうか?

公認会計士・税理士の回答

ご相談ありがとうございます。親子間での不動産リフォームや持分移転は、税務上の取り扱いが非常に複雑です。「贈与税の回避」と「住宅ローン控除の適用」を両立させようとするスキームには、いくつかの重大な税務リスクが潜んでいます。ご質問の4点について順に解説いたします。

1. 住宅ローン控除の適用範囲(持分按分のリスク)

住宅ローン控除は、原則として「自分が所有し居住する家屋」の増改築等に対して適用されます。着工時点での持分が1%である場合、控除の対象として認められるのは「リフォーム代金のうち、自己の持分(1%)に相当する額」のみとなります。

将来的に全持分を取得する計画があったとしても、税務上は工事やローン契約時点での「所有実態」が重視されます。そのため、390.3万円全額をご自身の住宅ローン控除の対象にすることは非常に困難(持分で按分されるリスクが極めて高い)です。

2. 譲渡所得(譲渡益)の発生リスクと計算

譲渡益が発生するかどうかは、現在の実勢価格(物件の時価)によります。横浜市の場合、地価の高騰により土地部分の価値が下がっていないケースが多く見られます。

仮に現在の実勢価格が3,000万円だった場合、売価の390万円は全体の13%にあたります。一方、原価(土地建物の取得費から28年分の減価償却費を引いた額)が2,500万円だったとすると、その13%は325万円となります。
この場合、差し引き65万円(390万円 - 325万円)の譲渡益が発生することになります。したがって、譲渡益の有無は「時価(売価)」と「原価(未償却残高)」を正確に比較して判断する必要がございます。

3. 評価額の採用(固定資産税評価額での代物弁済は危険)

代物弁済(不動産による債務の返済)は、税務上は「有償譲渡(売買)」として扱われます。親族間の有償譲渡において、実勢価格(時価)ではなく「固定資産税評価額」を用いることは非常に危険です。

特に横浜市のマンションの場合、時価は固定資産税評価額を大きく上回るのが一般的です。時価より著しく低い評価額で持分を移転すると「低廉譲渡」とみなされ、時価と相殺額の差額に対して、譲り受けた子側に贈与税が課されるリスクがあります。代物弁済時の持分割合は、必ず「時価」ベースで計算しなければなりません。

4. 契約書による贈与税回避とローン控除の矛盾

「子がリフォーム代を全額負担し、後日父が代物弁済する」という契約書を交わせば、工事時点での「父への贈与」という認定は確かに回避できます(税務上、子が父へリフォーム代を貸し付けた・立て替えた状態になります)。

しかし、この費用を「父に対する貸付金(立替金)」として処理した時点で、そのローンは「自分の家を改修するための資金」ではなく、「父の借金を肩代わりするための資金」とみなされてしまいます。結果として、ご自身の住宅ローン控除は(持分1%分を除いて)一切適用できなくなってしまいます。

まとめ:適正な税務処理のための事前対策

今回のスキームで「贈与税を回避しつつ、住宅ローン控除を全額享受する」という2つを両立させることは、税務上非常に困難です。

住宅ローン控除を適法にフル活用し、かつ贈与税のトラブルを防ぐためには、リフォームに着工する前に、リフォーム費用(390万円)に見合うだけの持分(時価ベース)をお父様から適正価格で買い取るか、「相続時精算課税制度」などを活用して事前に十分な持分の贈与を受けておくなど、オーソドックスな事前の持分整理を行うことをお勧めいたします。

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