【ご相談事例】離婚時の財産分与・養育費に関する贈与税と、特有財産の取り扱い
お客様からのご相談内容
離婚を検討しており、財産分与(慰謝料等なし)と養育費に関する税金について質問です。
原則として財産分与は2分の1が目安とされていますが、双方の合意でそれを超える割合で分与した場合、超過分は「贈与」として扱われ、110万円を超えたら贈与税の対象になるのでしょうか?また、分与するものが「現金」の場合と「不動産」の場合の違いも教えてください。
さらに養育費について、裁判所の養育費算定表を上回る額を受け取る場合(超過分が年額110万円以上になる場合)も贈与税がかかるのでしょうか?
また追加の質問ですが、夫が所有する「特有財産(不動産など)」の譲渡を妻が離婚を機に要求した場合、これは財産分与ではなく純粋な贈与として課税対象になりますか?
公認会計士・税理士の回答
離婚に伴う財産分与や養育費のお支払いは、その内容や対象となる財産の種類によって税務上の取り扱いが異なります。ご質問いただいた4つのポイントについて解説いたします。
1. 財産分与が「2分の1」を超える場合の贈与税
原則として、離婚による財産分与は「夫婦の共有財産の清算」という性質を持つため、贈与税はかかりません。
お互いの合意によって分与割合が50%を超えたとしても、婚姻中の個別事情を考慮して「不当に多すぎる(過大である)」と判断されない限り、贈与税の対象外となります。
(※ただし、税金逃れを目的とした偽装離婚と判断された場合や、財産分与にかこつけた明らかな贈与とみなされた場合は課税される恐れがございます。)
2. 分与する財産が「現金」か「不動産」かの違い
- 現金の場合:
原則として、分与する側・受け取る側の双方に税金はかかりません。 - 不動産の場合:
【分与する側(渡す側)】不動産を分与時の「時価」で譲渡したとみなされます(みなし譲渡)。取得時の価格より値上がりして利益が出ている場合、その利益に対して「譲渡所得税」が課税されます。
【受け取る側(もらう側)】贈与税や不動産取得税は原則非課税ですが、名義変更の手続きに伴う「登録免許税」は発生します。
3. 養育費が算定表の額を上回る場合
養育費算定表の基準額を上回っていても、直ちに贈与税の対象となるわけではありません。
扶養義務者間でやり取りされる「生活費又は教育費として通常必要と認められるもの」は、贈与税の非課税財産として法律(相続税法第21条の3)で定められています。そのため、実際に子供の生活費や学費としてその都度使われている限り、超過分(年額110万円超)であっても非課税となります。
ただし、多額の養育費を受け取って預貯金として長期間貯め込んだり、株式投資等に回したりした場合は「通常必要と認められる範囲」を逸脱したとして課税されるリスクがあります。また、将来分を一括で受け取る場合も、信託制度などを活用しない限り課税リスクが高まるため注意が必要です。
4. 特有財産(婚姻前・相続財産など)を譲渡する場合
ご認識の通りです。婚姻前から所有していた財産や、相続によって得た「特有財産」は、本来「夫婦の共有財産の清算」を目的とする財産分与の対象外となります。
そのため、離婚に伴って夫から妻へ特有財産を譲渡した場合、それが「慰謝料」や「離婚後の生活保障(扶養的財産分与)」として社会通念上妥当な額であると認められない限り、清算的財産分与とはみなされず「純粋な贈与」として妻側に贈与税が課税される可能性が高くなります。(※この場合も、渡す夫側には譲渡所得税がかかる点にご留意ください)。
ご相談者様からの声
詳しいご返答ありがとうございます。大変参考になりました。
「特有財産の譲渡」についても、認識の通りということでよく理解できました。ご丁寧にご説明いただきありがとうございました。
