カナダから日本へ移住する個人事業主の税務対策

【ご相談事例】カナダから日本へ移住する個人事業主の税務対策:TFSA口座や海外送金の注意点

お客様からのご相談内容

来月、カナダから日本へ長期移住を予定している夫婦です(妻は日本人、夫はカナダ人で配偶者ビザ)。移住に伴い、以下の状況で資産管理や節税の観点から質問があります。

・現在のカナダの自宅マンションを賃貸に出し、今後は不動産収入を得る予定。
・夫はフリーランスで、日本国外の企業からカナダドルで収入を得ており、日本では個人事業主として確定申告を行う予定。
・不動産を含め、総海外資産は5,000万円を超えている。
・最近夫婦でWise口座を開設済み(夫の所得受取用)。日本の銀行口座は現在妻のみ保有。

【ご相談事項】
1. カナダ出国前にしておくべき節税対策や、日本の確定申告に向けて準備すべきことはありますか?
2. 夫のTFSA口座(非課税口座)に1,000万円以上の資産がありますが、このままでよいでしょうか?(居住5年目以降の課税が心配です)
3. 海外発行クレジットカードの利用は「送金」とみなされると聞きました。まとまったお金や生活費を日本へ送金する際、余計なキャピタルゲイン課税や贈与税を避けるベストな方法を教えてください。

公認会計士・税理士の回答

ご相談ありがとうございます。海外からのご移住、特に事業収入や海外資産(不動産、投資口座など)をお持ちの場合、出国前後の手続きや資金移動のタイミングが非常に重要になります。ご質問いただいた3点について、日本の税務上の観点から解説いたします。

1. カナダ出国前の節税対策と確定申告の準備

  • カナダの出国税(Departure Tax)の確認:
    カナダの非居住者になる際、特定の保有資産を時価で売却したとみなして課税される「出国税」の制度がございます。こちらについては、必ずカナダ現地の税理士等にご相談の上、適切な申告を行ってください。
  • 全資産の「時価証明」の確保:
    日本への入国日時点での各口座残高、TFSAの時価、不動産の評価額がわかる証明書(ステートメント)をダウンロードし、確実に保存してください。日本居住後に資産を売却する際、カナダ出国時の時価が「取得費(元本)」となります。将来の譲渡所得の計算(二重課税の調整)や、日本への送金課税における元本証明のために必要不可欠な資料となります。

2. TFSA口座(1,000万円以上)の取り扱い

日本の税制において、カナダのTFSA(非課税口座)の優遇措置は適用されず、日本の「一般の課税口座」と同じ扱いになります。

【対策】
日本入国後5年間(非永住者期間)は、TFSA内で生じた利息・配当・売却益などの「国外源泉所得」は、日本へ送金しない限り日本の所得税は課税されません。そのまま保持する場合は「一切引き出さない(日本へ送金しない)」ことが鉄則となります。
ただし、入国から5年経過後は「全世界所得課税」の対象となり、送金しなくても日本で課税されるようになります。そのため、カナダ出国前に一度利益を確定させるか、入国後5年以内に資産の再編を検討されることをお勧めいたします。

3. 日本への送金と生活費の確保策

ご記載頂いた通り、日本国内で海外発行のクレジットカードを利用すると「日本への送金」とみなされ、非永住者の送金課税(国外源泉所得の持ち込み)の対象になるリスクがございます。

  • ベストな送金タイミング:
    旦那様が「日本の居住者になる前(入国前)」に、まとまった生活資金を日本の口座(奥様の口座など)へ送金しておくのが最も安全かと存じます。非居住者時代の送金であれば、日本の所得税の対象外となります。
  • 贈与税への配慮:
    奥様名義の口座で資金を受け取る場合、そのお金が「夫婦の生活費の実費」として使われるのであれば贈与税は非課税です。しかし、余剰資金で資産運用などを行うと贈与とみなされるリスクがあるため、「生活費専用口座」として明確に分けて管理することが重要かと存じます。
  • 入国後の生活費:
    基本的には、旦那様が日本で得るフリーランス収入(日本で課税対象となる所得)を生活費の原資とされるのが安全な運用かと存じます。
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