【ご相談事例】65歳・売上1,200万円。あえて法人化せず「個人事業主」を続けるメリットとは?
お客様からのご相談内容
65歳、個人事業主1年目です。賃貸業、コンサル業、著述業などで年間1,200万円ほどの売上を見込んでいます。
現在、OB健保(特例退職被保険者制度など)に加入できているため月額3万円ほどの保険料で済んでおり、国民健康保険には未加入です。また、これまでは全額カットされていた国民年金も、個人事業主になったことでようやく満額もらえるようになりました。
世間では法人化を勧める声が多いですが、自分のケースにおいては「法人化せずに個人事業主で続けたほうがメリットがある」と考えています。この認識で間違いないでしょうか?
公認会計士・税理士の回答
ご相談ありがとうございます。現在の状況を拝見する限り、ご推測の通り「法人化せず、個人事業主のまま事業を継続する方がメリットが大きい」かと存じます。その3つの理由と、今後のアドバイスについて以下記載させて頂きましたのでご確認下さい。
1. 年金が全額支給される(在職老齢年金制度の回避)
もし法人化してご自身に「役員報酬」を支給する形をとった場合、社会保険(厚生年金)への強制加入となります。これにより、役員報酬と年金の合計額が一定基準を超えると「在職老齢年金制度」が適用され、再び年金が一部または全額カットされてしまいます。
現在、個人事業主として年金を全額受給できているのは、「事業所得が厚生年金の報酬としてカウントされないため」です。この恩恵は非常に大きく、満額受給を維持できることは個人事業主ならではの最大のメリットと言えます。
2. 現在の「OB健保」の保険料が非常に割安である
月額約3万円でOB健保に加入されているとのことですが、これは非常に有利な状況です。もし法人化して社会保険に加入した場合、役員報酬の額に応じて健康保険料が計算されるため、負担が大幅に上がる可能性が高いです。
また、法人化せずとも、仮に国民健康保険(国保)に切り替わった場合、売上1,200万円(所得にもよりますが)であれば、国保の保険料は現在の「月3万円」を大きく超えてしまう可能性が高いと考えられます。
3. 「法人化の節税メリット」よりも「年金カット等の損失」が上回る
売上1,200万円規模となると、たしかに個人事業主のままでは所得税・住民税・個人事業税の負担が大きくなりやすく、法人化することで「法人税の低い税率」や「給与所得控除」を活用した節税が見込めます。
しかし今回のケースでは、「法人化による税金の圧縮額」よりも、法人化に伴う「年金カットの損失 + 社会保険料の増加額」のマイナスの方が大きくなってしまう可能性が高いと推測されます。
今後のアドバイスと注意点
現状は、無理に法人化せず「個人事業主のまま合法的に経費を計上し、青色申告特別控除(最大65万円)などをフル活用して所得税・住民税を抑える」という方針がベストかと存じます。
ただし、1点だけご留意ください。OB健保の加入期間が75歳までとのことですので、75歳以降は「後期高齢者医療制度」へ移行することになります。その際の保険料は前年の所得によって決まるため、74歳時点での事業規模や所得の調整については、将来的に再度シミュレーションを行われることをお勧めいたします。
ご相談者様からの声
とてもわかりやすい回答をありがとうございます。
世間では「法人化したほうがお得です」という記事がほとんどの中、自分のケースにおいては個人事業主でいたほうが良いのではないかと頭を悩ませていたところでした。年齢的に働けるのはあと5~6年かなとも思いますので、このまま個人事業主でいきたいと思います。本当にありがとうございました。

