遺産分割協議書の案と違う相続税納付書が期限直前に送られてきましたがどうるのがよいでしょうか?

【ご相談事例】申告期限の直前に異なる遺産分割案と相続税納付書が届いた場合の対処法

お客様からのご相談内容

叔母が亡くなり、母とその姉妹の計3人が法定相続人となっています。

母が生命保険金の受取人に指定されていることを他の姉妹が不満に思っており、相手方の税理士(自営業の叔母の顧問税理士)から、母に不利な遺産分割案を提示されました。話し合いの末、一度は別の案で合意したのですが、相続税の納付期限まであと2日という今になって、以前の合意とは異なる遺産分割協議書案と、母の税負担が70万円ほど高くなっている新しい納付書が突然送られてきました。

まだ遺産分割協議書に実印は押していません。期限が2日後に迫る中、どのように対応すればよいでしょうか?

公認会計士・税理士の回答

申告期限のわずか2日前に予期せぬ書類が届き、大変ご不安なことと存じます。結論から申し上げますと、「納得がいかない限り遺産分割協議書に実印は押さない」こと、そして「とりあえず『未分割(法定相続分)』の状態で申告・納税を行って期限を守る」のが最善の対応かと存じます。

具体的な理由と、今すぐ取るべき行動について以下解説させて頂きます。

1. 遺産分割協議書には絶対に実印を押さない

遺産分割協議は、法定相続人「全員」の合意と実印があって初めて成立します。一度実印を押して合意してしまうと、後からその内容を覆すことは極めて困難になります。送られてきた内容に納得できない場合は、署名・捺印を行わない事が重要になります。

2. 生命保険金は「遺産分割の対象外」

お母様が受取人として指定されている生命保険金は、原則として遺産分割協議の対象にはなりません。(※みなし相続財産として相続税の計算には含まれますが、他の相続人に分割して渡す法的な義務は生じません)。他のご姉妹が不満を持たれたとしても、お母様がそのまま受け取られて全く問題ございません。

3. ペナルティを防ぐための「未分割申告」

相続税の申告・納付期限を過ぎてしまうと、「無申告加算税」や「延滞税」といったペナルティが発生します。これを防ぐための正当な手段として、遺産分割がまとまっていない(未分割)ことを前提に、一旦「法定相続分(今回は3分の1ずつ)」で遺産を取得したものと仮定して申告し、納税を済ませる方法がございます。

お母様の納付額が70万円高くなっているとのことですが、これは相手方の税理士の方がペナルティ回避を優先し、暫定的に「未分割申告(法定相続分)」用の納付書を作成して送ってきた可能性も推測されます。もしそうであれば、現在の対応としては適正かと存じます。遺産分割協議が後からまとまり、払い過ぎていたことが確定した場合は、「更正の請求」を行って税金の還付を受けることが可能です。

4. 今すぐ取るべき行動

相手方の税理士の方に対して、以下の旨をお伝え(またはご確認)頂く事をお勧め致します。

  • 「提示された協議案には同意できないため、実印は押せない」
  • 「期限が迫っているため、今回はとりあえず『未分割(法定相続分)』での申告をしてほしい」(※今回の納付書がその前提であれば問題ありません)
  • 「後日、遺産分割がまとまった際に『更正の請求』または『修正申告』で精算する」

将来、「小規模宅地等の特例」などを適用する可能性がある場合は、未分割申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を必ず添付するよう申し伝えてください。

万が一、相手が未分割申告に応じてくれない場合は、お母様ご自身(単独)で法定相続分に基づいた未分割申告書を作成し、提出・納税することも可能です。まずは期限内の申告・納税を済ませてペナルティを防ぎ、期限後に落ち着いてから適正な遺産分割に向けた交渉を再開されることをお勧めいたします。

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