不動産譲渡所得の更正の請求について

【ご相談事例】同一年内の不動産売却で損失申告を忘れた場合の更正の請求(内部通算)

お客様からのご相談内容

昨年、2件の不動産を売却しました。1件目は利益(譲渡益)が出たため確定申告を行い、2件目は損失(譲渡損)が出たため申告しませんでした。

後になって、同じ年に売却した物件の利益と損失は合算(内部通算)して申告すべきであり、損失も申告すれば税金が安くなると知りました。

しかし、税務署へ電話で相談したところ「損失分を申告しなかったことは計算誤りや法令違反には当たらないため、更正の請求(やり直し手続き)はできない」と言われてしまいました。私のケースでは、本当に更正の請求は認められないのでしょうか?

公認会計士・税理士の回答

結論から申し上げますと、同一年内に売却した2件の不動産の利益と損失を合算(内部通算)せず、1件のみ申告した今回のケースは、法律上明確に「更正の請求(税金の還付手続き)」の対象となります。

税務署の電話窓口で「更正の請求はできない」と回答されたのは、担当者との前提条件のすれ違いや、制度に対する誤解が生じていた可能性が高いと考えられます。

1. 更正の請求が認められる法的根拠

不動産の譲渡所得においては、同じ年(1月1日〜12月31日)に行われた取引であれば、生じたすべての利益と損失を強制的に合算(内部通算)して計算しなければならないという大原則があります。

これは「申告するかどうかを任意で選べる制度(選択制)」ではありません。したがって、損失が出た物件の計算を漏らしてしまったことは、「有利な制度のあと出し」ではなく、国税通則法第23条に定められている「正当な計算誤り(法令の規定に従っていなかったことによる過大申告)」に該当します。

2. なぜ窓口で「できない」と言われたのか?(税務署側の誤解)

税務署の現場担当者は、お電話でのご相談内容から以下のいずれかのケースと混同し、「対象外である」と判断してしまったと推測されます。

  • 給与など「他の所得」との相殺(損益通算)と勘違いされた:
    不動産の売却によるマイナスは、原則として給与所得などの他の所得とは相殺することができません。
  • 「マイホームの譲渡損失の特例」と勘違いされた:
    当初の確定申告できっちりと手続きを済ませていないと適用できない、要件の複雑な特例を使おうとしていると誤解された。
  • 「申告不要制度」と混同された:
    上場株式の取引などのように「申告しない」ことを選べる制度と混同され、後出しでの変更は認められないと判断された。

3. 払いすぎた税金を取り戻すための具体的なアクション

理論上は更正の請求が可能であっても、窓口での説明の仕方によっては別の制度と混同され、難色を示されるリスクがあります。確実にお手続きを進めるため、以下の手順をお勧めいたします。

  • 「特例の使い忘れ」ではなく「計算誤り(集計漏れ)」であると主張する:
    窓口では「損した分も入れたい」といった曖昧な表現は避け、「同一年内の不動産譲渡所得の計算において、1件分のマイナス物件の集計が漏れており、譲渡所得の総額を過大に申告してしまった単なる計算誤りです」と正確にお伝えください。
  • 客観的な証拠書類を揃える:
    更正の請求を通すためには、「本当に損失が出たのか」という事実証明が不可欠です。2件目の物件の取得費(購入時の契約書など)や譲渡費用(売却時の契約書、仲介手数料の領収書など)を用意し、数字の根拠を示せる状態にしてください。
  • 郵送やe-Taxで直接提出する:
    窓口の口頭相談で渋られた場合でも、正式な「更正の請求書」と「証拠書類一式」を提出すれば、税務署は法的な根拠に基づき審査・処理を行う義務があります。書類の受け取り自体を拒否されることはございません。

ご相談者様からの声

大変分かりやすかったです。ありがとうございます。そのまま、郵送でやってみます。

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